2020.05.06 練拳閑話

陳式(照奎)太極拳 簡介

さて、師父が伝えられる太極拳について紹介してみたいと思います。
まず師父の師である、つまりは私の師爺である陳照奎師は、7歳の時に、その御尊父である陳発科公に家伝の陳式太極拳を学び始められたそうです。

「陳式」と「陳氏」の違い

ここで、陳式太極拳と陳氏太極拳という呼び名の違いについて簡単に説明いたします。
そもそも陳氏太極拳は、陳氏一族の拳法として伝承されてきました。その後、陳長興から楊露禅へと、初めて陳氏ではないものへと伝えられました。

その後様々な系統に別れますが、源流の陳氏一族が呼称する時は「陳氏」といい、それ以外の場合は「陳式」と呼称するようになりました。
師父も私も陳氏一族ではないので、あくまで「陳式太極拳」と呼称しています。

家伝の低架式(功夫架)

さて、師爺の話に戻ります。
師爺が陳発科公から学んだのは、家伝の低架式(あるいは功夫架とも)で、これは難度が非常が高い代わりに、功夫も付きやすいものでした。功夫(コンフー)とは、修練によって身につく力を指します。

余談ですが、陳発科公はあまりこの架式を表立って伝えることがなかったため、その辺の事情を知らない人たちは、師爺が套路を改変した、と思っているようです。

「この拳は父から伝わった正統な架式だ」

「架式は太極拳のすべての功夫の基礎となるもので、そのため、この拳はまたの名を功夫架と呼ぶ」

— 陳照奎師爺

私の師父・馬虹は、40を過ぎてから陳照奎師爺に学び始め、先にも書いたとおり、北京や河南に赴き、また時には自宅に招いてその技術を学んだそうです。
その拳は、陳氏14世で「牌位陳」と呼ばれた陳長興の伝をよく継いでいます。

十の技術的特徴

一、身法は端正にして、拳勢は低い

前述の通り、師父が伝えられた拳は「低架式」と呼ばれ、姿勢がとても低いです。ただその低さにも限度があり、仆歩(しゃがんで片足横に伸ばした姿勢)を除けば、大腿部は膝より下がらず、膝下と大腿部の角度は90度を下回らないようにします。
陳発科公がおっしゃる、「拳を打つにあたっては、椅子に腰掛けているように安定している」という状態にします。

また、虚実の変換や重心移動の際には、下向きの弧を描いて行いますが、これを陳照奎師爺は「鍋底のように動く」とおっしゃられたそうです。
ただし、この要求はかなり運動強度が大きく、難度も高いので、老人や体の弱い方は、その限りではありません。

二、対称的で調和が取れ、哲理に満ちている

対称というのは、太極拳ではおなじみの「陰陽」に始まり、「左右」や「前後」、「上下」などを指します。また、「開合」というの言葉もよく聞かれるかと思います。
ただ、「開」して「合」するだけだと、調和とは言えませんね。「開合」の場合は、「開中有合、合中寓開(開の中に合があり、合の中に開がやどる)」に注意する、といった具合です。

また、「陰陽」とは、陰陽学説に基づく考え方であり、さらに、中国伝統の経絡学説などを太極拳は取り込んでおり、それによって精神を平静にし、人と自然が相応するようになります。

三、順逆の纏絲と、弧

纏絲とは、簡単に言えば捻じりであり、螺旋です。先に上げた「開合」においても常に螺旋の中で実践されるべきものです。
陳式太極拳は、ゆっくりの動作ばかりでなく、時に素早く、時に跳躍し、と激しく動くことも多いですが、そのような動作にあっても、螺旋を失ってはいけません。
また、その動作は必ず弧を描くように行われます。

四、丹田の内転と、身体の折畳

太極拳は、内面では気沈丹田と丹田内転を行い、外形においては身体の折畳と全身の連動、螺旋式の運動を、その特徴とします。

丹田という、物理的な存在ではないものをどのように意識していくか、ということは非常に重要です。当会で行う、丹田内転のための練習法は、実際には独立して学んだものではないのですが、演繹的に抽出したものです。
ただし、馬虹師父に確認し、理解と実践法に間違いないことを確認しております。

五、剛柔相済、鬆活弾抖

これは、発勁に関するもので、全身をゆるめた上で、螺旋状に発せられる爆発的な力を発することを指します。
陳照奎師爺の言を引用すれば、このような力は陳家溝では「一格霊」と呼ばれ、一般には「寸勁」と呼ぶものである、とのことです。

鬆活弾抖勁の鍛錬は、体の螺旋運動を通して、気血を全身に滾らせ、精神を奮い起こすことが出来ます。

六、虚実の調和と、軽重兼備

陳照奎師爺は「虚実」について2つの面から論じておられます。一つは重心の転換時における虚実で、もう一つは発勁における虚実です。

重心だけで言えば、重いほうが「虚」となりますが、発勁として考える時、必ずしもそうならないことがあります。これが「虚実」の2つの面となります。
この「虚実の2面性」を明確にすることで、軽重を兼ね備えることが出来るようになります。

七、速さとリズム

ここで言う「速さ」というのは、中国語では「快慢相間」といい、「時に速く、時にゆっくり」という意味です。
人によっては、練習はゆっくり行うが、実戦では速く動く、という理解をしていたりもしますが、陳照奎師爺は、各動作の中にも可変的な速さがあり、それがリズムとなる、と言われます。

ただし、速く行うからといって動作が乱れてはいけませんし、ゆっくりだからといって止まってしまってはいけません。

八、呼気に重きを置き、内気を震わせる

どの太極拳のおいても呼吸は重視されますが、陳照奎師爺は特に、呼気に重きを置かれました。発勁の際は特に顕著で、口を開けて声とともに息を吐いてもよく、そうすることで、胸や肺への負担を防ぐことが出来ます。

また、息を吐くことが副交感神経を刺激することで、リラックスを促すことが出来ます。同時に心拍を抑えて心臓への負担を減らし、血管が緩むことで気血の流通を容易にし、血圧を下げることが期待できます。
また、技撃の面では、声とともに息を吐くことで、意・気・力をあわせ、敵に対しても、ある種のプレッシャーとなります。

九、技撃性の高さと、動作ごとの用法

太極拳は、言うまでもないですが、武術です。なので、動作の大小に関わらず、技撃用法があります。
套路の外形だけでなく中身としての用法を学び、推手によって動作を検証し、単式練習で敵に対応する方法を身に着けます。
いかんせん動作に深く関わる項目なので、言葉での説明は難しいため、ここまでとします。

十、美しさ

いま世界中で太極拳の愛好者が多くいるのは、もちろん健康面での効果の高さもあるでしょうが、やはりその動きの優雅さや優美さにも、一因があることは誰も否定しないと思います。

その美しさは、ここまでに述べてきた、「対称」や「開合」、「螺旋」や「軽重」といったものが持つ美しさであり、また生命力の表現としての美しさです。また、意識と動作の一致によって表される美しさです。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。
それぞれ簡単に説明いたしましたが、実際のところ、一つ一つは明確に分けて論じられるものではありません。
当研究室では、練習の合間合間に、それぞれの習得具合や理解に合わせて解説を、必要に応じて行っています。
興味を持っていただけましたら、幸いです。

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