2026.01.18 練拳閑話

円を描く —— 黒いマジックで白い円を描く方法

今回のタイトルは「円を描く」。
と言っても、単なる太極拳の動作解説の話ではありません。
物事の捉え方、あるいは「正しい形」の見つけ方についてのお話です。


教室の生徒さんはよくご存知かと思いますが、私が指導の際によく話す、ある「たとえ話」があります。

「ホワイトボードに、黒いマジックで『白い円』を描くにはどうすればいいか?」

少し考えてみてください。
白いマジックを使わずに、黒いマジックだけで白い円を表現するのです。



どうでしょうか?
答えはシンプルです。

「丸く残して、周囲を黒で塗りつぶす」

逆転の発想ですが、これがなぜ太極拳の話になるのか。

曖昧さと普遍性

実は、太極拳の動作というのは、ある意味で結構「曖昧」なものです。
もちろん、当研究室の場合、始点と終点は大体明確に決まっています。しかし、その間の「路線(軌道)」に関しては、人それぞれで若干の違いが生じます。

それは当然のことです。
人によって身長も違えば、手の長さ、足の長さも異なります。
骨格が違えば、描く円の大きさやカーブの具合が見た目には変わってくるのは自然なことです。

競技用の表演武術などでは、採点の基準として規格を揃える必要があるため、この辺りも細かく規定されているのでしょう。
けれど、伝統武術では、そこまで外見的な均一さを細かく問いません。

では、外見が人それぞれ違う中で、伝統武術はどうやって「正しさ」を練習し、理解していくのでしょうか?

「理」が命

たびたびお伝えしていますが、伝統武術においては「理(ことわり)」が命です。
ここで、先ほどの「白い円」の話が繋がります。

「理にかなっていない動作(路線)をすべて排除し、
残ったところが、自ずと正しい場所になる」

無理な力みがある場所、構造的に弱くなる角度、武術的に隙ができる軌道……。
そういった「黒く塗りつぶすべき場所(やってはいけないこと)」を理解し、排除していく。
そうして最後に残った「白い部分」こそが、あなた自身の身体にとっての正しい太極拳の動きなのです。

ですから、練習においては、

  • ただ漫然と弧を描けばいい
  • 円運動の形をなぞればいい

と考えるのではなく、


  • 「どういう弧を描くべきなのか?(理にかなう軌道はどこか)」

  • 「どんな円運動(厳密には球体運動)を行えば、力が通るのか?」

という点に気をつけてみてください。
そうやって削ぎ落としていくことで、他人の真似ではない、自分の太極拳を見つけられると思います。

東洋身体研究室 代表 裏山 元紹

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