2006.01.09 練拳閑話

万事開頭難

中国に留学し、初めて陳式太極拳を学び始めた頃。私の最初の師である張偉一老師が、口癖のように繰り返していた言葉があります。
それは、あまりにも当たり前で、けれど私たちがつい忘れがちになる大切な事実でした。


「太極拳は難しい」という既成概念

「何事も始めは難しい」。
張老師はよくそうおっしゃっていました。

陳式太極拳はその動作の複雑さから難しいと思われがちですが、それは二十四式であっても、あるいは他の武道やスポーツであっても同じです。勉強や仕事でも、最初は誰もが初心者です。

しかし、最初の方で少しつまづくと、「自分には才能がないのではないか」「太極拳には向いていないのではないか」と諦めてしまう人がいます。その結果、「太極拳は難しいものだ」という恐怖心が、自分の中に既成概念として根付いてしまうのです。

昨日できなかったことが、今日になってもできない。
明日も、明後日も……。
そんな先の見えない練拳の日々が続けば、不安にさいなまれるのは当然のことかもしれません。

「横ばい」の先に待つレベルアップ

もともと運動が大嫌いだった私が、こうして太極拳を続けていられるのは、修行の早い段階で「できないことも、必ずできるようになる日が来る」という体験をしたからです。

学習の進歩というものは、決してきれいな右肩上がりの直線ではありません。一向に成長を感じられない「横ばい」の時期が長く続き、ある日突然、ポンと階段を上がるようにレベルアップする。その繰り返しなのです。

「できない」と悩み、夢にまで見るほど考え続ける。
そうして身体と頭を使い切ったとき、不思議なことに、昨日まであれほどできなかったことが嘘のようにできてしまう日が訪れます。

布団をはね飛ばした修行の日々

長拳を練習していた頃、どうしてもうまくできなかった跳躍技が、繰り返しの果てにある日突然できるようになった時の喜びは今でも忘れられません。

留学から帰国した当時、まだ仕事に就く前の私は、中国にいた頃と同じか、それ以上の猛練習を自分に課していました。寝ている間も頭の中は太極拳のことでいっぱいで、ベッドから転げ落ちそうになるのを手で支えながら寝ていたり、寝ぼけて「掩手肱錘(えんしゅこうすい)」を放ち、布団を勢いよくはね飛ばしていたこともあります。

それでもできないことは山ほどありました。しかし、決して諦めなかったのは、「いつかできる日が訪れる」という確信を張老師から授かっていたからです。

一歩ずつ、成功へ近づく楽しみ

できの悪かった私を、この言葉で辛抱強く指導してくださった張老師には、いくら感謝しても足りません。

もし今、皆さんも「できない」ことに直面しているなら、それを嘆かないでください。失敗するたびに「いま、また一歩成功に近づいた!」とワクワクしながら、練習を続けてほしいと思います。
さあ、今日も身体と頭に心地よい汗をかいていきましょう。

東洋身体研究室 代表 裏山 元紹

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